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2020年5月29日 (金)

ブックカバーチャレンジの補足その4

 フェイスブックでやってみたブックカバーチャレンジ。本編は表紙写真をアップして本の詳しい説明は必要なし、というものだったので、ここではそれぞれちょこっと補足してご紹介することに。
 4冊目は、宇野信夫著作集『江戸の夢』。
 志の輔の落語で聞いた『江戸の夢』に感動して、原作を読んでみたいと思って入手。発行は昭和431968)年で、レトロな装丁もなかなか素敵。宇野信夫さんのことは落語を聞くまで知らなかったのだが、歌舞伎や落語の話を多く書かれていて、なんと昭和281953)年に、それまで長く上演が途絶えていた近松の『曽根崎心中』を脚色・演出して復活上演したというお方であった。舞台は新橋演舞場。お初と徳兵衛は二代目中村扇雀(=四代目坂田藤十郎)と二代目中村鴈治郎がつとめ、社会現象と言われるほどの大人気に。そして、その翌々年に文楽でも復活上演された。歌舞伎の“曽根崎”は現在もこの宇野版の脚本と演出で上演されているのだそうで……考えてみたら、歌舞伎の曽根崎はまだ生ではちゃんと観たことないかもしれない。文楽ではちょくちょく観ていますが。
 『江戸の夢』は、もともと6代目圓生のために書かれたもので、本の後記(あとがき)には、こう書かれている。
 「東京放送から、三遊亭円生(記述のまま)の為に一時間の人情噺を依頼されたのは、三十七年の春であった。私は戦前、六代目菊五郎と中村吉右衛門で上演した「人情噺小判一両」を人情噺に書き直して渡した。円生はこれを放送し、独演会でも口演した。続いて「江戸の夕立(大名房五郎)」「うづらごろも」「江戸の夢」の三篇を、円生の為に書いた。円生はラジオやテレビで放送し、独演会でもこれを勤めた。」(以上、抜粋)ちなみにこの本の中には、「小判一両」、「うづらごろも」、「江戸の夕立」、も収められていて、さらに別の3篇も。満載です。
 最初に志の輔の「江戸の夢」を聞いたときのことは2009614日の拙ブログにも書いているが(にゃんともう11年も前......)、さっと要約すると、主人公は奉公人から庄屋の娘婿になった藤七という男。その素性が全くわからないままだったのだけれど、ある時、庄屋の夫婦が江戸見物に行くことになって話が動きだす......(以下省略)。とにかく、終わり方がなんともスカッとして、気持ちのいい噺。志の輔師匠は圓生師匠のご遺族に了解を取って、この噺を自分の高座にかけるようになったそうだが、志の輔らくごの中でも、わたし的には特に好きなものの一つだ。清々しい青空にツバメが飛ぶ……季節はちょうど今頃か、もう少し後かな。
 ブックカバーの撮影は、噺の舞台が浅草ということで、現代の浮世絵師といわれる門脇俊一さんの『大江戸名所百景』の浅草のページとともに。

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2020年5月18日 (月)

ブックカバーチャレンジの補足その3

 フェイスブックでやってみたブックカバーチャレンジ。本編は表紙写真をアップして本の詳しい説明は必要なし、というものだったので、ここではそれぞれちょこっと補足してご紹介することに。……という感じでやっていたら、Instagramでもこのブックカバーの振り返りというか再投稿(repost)みたいなことをやることになった(なりゆきで)。とはいえ、そちらでもあまり多くの説明はしないので、ここで書くことが一番長くなります。
 3冊目に選んだのは、『水滴』(目取真俊)。
 作家は沖縄に生まれ育ち、地元の自然や風土、歴史に根ざした小説を書いている。この文庫に収められた表題作『水滴』と『風音』には、先の戦争で壕の中に置き去りにされた兵士たちや、海に散った若い特攻隊員のエピソードが登場し、沖縄の人に“取り付いて離れない灰汁のような戦争の記憶”が生々しく描かれている。短編だけれど、どちらも中身が濃くて読み応えがある。
 沖縄に初めて行ったのは20代の頃、海と島をめぐる旅雑誌の取材のためだった。美しい海の自然やおおらかで優しい島の人たちに魅了されて、その後は仕事でもプライベートでも足を運ぶ機会が増えた。食べ物、手仕事、音楽、人々……訪れるたびに興味が増幅されて、戦争の話もいろいろと聞いた。海の仕事を離れても“沖縄熱”みたいなものは冷めることなく、そのうちに現地に友達と呼べる人も何人かできて、ここ数年は専ら、焼き物の窯を訪ねる目的で行くことが多くなった。
 この文庫本は目取真さんの本として一番最初に買ったものだった。照りつける強烈な太陽の光や、鬱蒼と茂る植物のむせかえるような匂い、堂々としたガジュマルの木。そんな親しみのある沖縄の風景描写の中に現れる、戦争で犠牲になった人の魂。フィクションだけど、本当にあっても驚かないだろうなと思うような話。生命力にあふれた自然や人々の営みと、戦争による無数の死の記憶。戦後70年以上が経っても、どちらも沖縄に共存しているものなのだろうと思う。

 ブックカバーはお友達でもある沖縄のアパレルブランド「YOKNAG」の首里城の柄のストールと一緒に撮影。その売り上げの10%は首里城再建のための寄付になるそうだ。昨年の首里城の火災は私にとっても大きなショックだった。年末に首里を訪れた時に、焼け残ったお城の一部に挨拶してきた。戦争で焼失しても見事に再建された首里城。きっとまた立ち上がってくれることを信じて。ガンバレ首里城。ガンバレ沖縄。

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2020年5月 5日 (火)

ブックカバーチャレンジの補足その2

 フェイスブックでやってみたブックカバーチャレンジ。本編は表紙写真をアップして本の詳しい説明は必要なし、というものだったので、ここではそれぞれちょこっと補足してご紹介することに。
 2冊目は『バーナードリーチ 日本絵日記』(バーナード・リーチ著、柳宗悦訳、水尾比呂志補訳)。イギリス人の陶芸家、バーナード・リーチが昭和28年から翌29年にかけて日本各地の窯場や名所を巡った旅の記録。焼き物を始め日本の手仕事に関する取材をするようになってから、民芸のこと、リーチのことなどもっと知りたくなって手に入れた本の一つ。戦後、まだ新幹線もない時代に列車に揺られての移動で各地を訪ね、現地の職人たちと一緒に作陶や家具作りをしたリーチ。その目を通して語られる当時の日本の工芸や美術。益子をはじめ、島根の出西窯、大分の小鹿田の窯も出てくる。
 小鹿田焼きといえば、大学に入って東京で一人暮らしを始める時、母親から持たされた食器の中に小鹿田焼きが数個あった。新品だけれど、自宅でも見慣れた飛び鉋や流し掛けの模様で、二十歳前の自分にはちょっと色も渋目で地味だなぁと思ったものだったが、その一部は今も割れずに我が家の食器棚にあり、飛び鉋の大皿などは煮物や揚げ物を盛るのにちょくちょく活躍している。そういうことを考えると、人生ってちょっとおもしろい。
 本のカバーは、出西窯で作られたリーチ・ハンドルのピッチャーとともに撮影。

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