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2011年12月10日 (土)

感劇話その170 せつない親子の情愛に涙__12月文楽公演「奥州安達原」 

(“感劇”は、感激と観劇を合わせた勝手な造語です。念のため。文楽、歌舞伎、落語、お芝居その他ライブの感想をまとめています。)

 今年の文楽も、もう最後の月になってしまった……早いなあ。毎年、12月公演を見終わったら、あれよあれよという間に1年が終わってしまう感じで……意味もなく気ぜわしくなるこの時期はちょっと苦手。しかし、劇場にいる時間はその時間をしっかり、ゆったり楽しみたいもんだ……。
 てことで今回の演目は、時代物「奥州安達原(おうしゅうあだちがはら)」の二段目と、三段目の切場(クライマックスのこと)の部分。この話は、八幡太郎義家らの奥州征伐によって敗れた安倍一族の残党(主に安倍貞任、宗任兄弟)のリベンジを軸に展開する大作で、ストーリーはけっこう複雑、しかも登場人物の立場が二転三転するので、一部分を見ただけではなかなか内容はわかり辛いと思われる。以前は三段目の切場だけを見たのだが、やっぱりいまいち話の全体がつかめなかった。しかし今回は、二段目の「外が浜の段」と「善知鳥(うとう)文治住家の段」も上演されたことで(なんと「外が浜の段」の上演は21年ぶりだそうで)、貞任、宗任の立場や、三段目に出てくる人たちとの人間関係が、以前よりはずっと理解できたのがよかった気がする。
 三段目のいちばんの見せ場はやっぱり、貞任の妻である袖萩と娘のお君、さらに袖萩の母、浜夕との情愛を描いた部分だろう。貞任とかけおちみたいなことをしたために勘当の身となっている袖萩が、噂で聞いた父の身(やがて切腹する)を心配するあまり、数年ぶりに両親の住む御殿を訪れる。しかし袖萩は長年の苦労がたたって既に目が見えず、小さな娘に手を引かれながら、雪の中で御殿の門の外までたどり着き、じっとたたずむだけ。両親、とくに父親はその存在に気づいても、武士の家の体面もあってか、娘を冷たく無視してしまう。凍えそうになる雪の中で発作をおこした袖萩を気遣い、自分の着物を脱いでかけてあげる、娘のお君。目が見えない袖萩はそれに気づかず、しばらく経って裸同然の娘に気づき、驚嘆し、嘆く。その有様を見ていた浜夕は、たまりかねて自分の着ているうちかけを脱ぎ、門の中から外に投げる……一連のこのシーンは何度接しても涙なくしては見られない。
 仕方のないことではあるが、全体を通して武士の生きざまだから男目線で書かれている話で、女子供については悲劇でさえも軽く扱われがちなこの話の中にあって、母子三代のやりとりをこまやかに描いたこの部分はとても見ごたえがあり、悲しい名場面だと思う。勘十郎さんの遣う袖萩は、その狂おしさが丁寧に表現されていたと思った。
 それにしても、これは文楽の中でも大河ドラマ的作品の一つだと思うのだが、私はまだ結末を見たことがない。いつか最後の五段目も上演されるのだろうか……。

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袖萩とお君

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