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2011年2月26日 (土)

感劇話その160 いまの自分にはかなりタイムリーだったかも……。野田マップ『南へ』@東京芸術劇場

(“感劇”は、感激と観劇を合わせた勝手な造語です。念のため。文楽、歌舞伎、落語、お芝居その他ライブの感想をまとめています。) 

 木曜日夜に帰り着き、昨日からまた通常モード。といってもなんかまだ頭の中がごちゃごちゃとして、落ち着いて何かをするというモードに至れない感じなんだけど。昨日は午後からフランス美術の先生と打ち合わせ、のち、夜は野田地図の『南へ』を観てきた。以下はネタバレになるので、これから行く人はスルーしてくださいね。
 この前に観た『表へ出ろい!』や『ザ・キャラクター』がけっこうわかりやすい内容だったせいか、今回はかなり難解な気がした。けれど、一つひとつの事象とか、言葉なんかのもつ意味について、ああ、なるほど、と思うようなことは多々あって。ちょっとどきっとしたのは、天皇の行幸が日本軍の行軍に変わっていくシーン。帽子を被り、さり気なく衣装や小物をチェンジさせるだけで、厳かなムードの行幸の一団が、死へと向かっていく重苦しい日本兵の行軍に一変する。あの変わり方はすごいなあと。そして、そこから展開する数分間のシーン。全体的に、曖昧模糊とした感じで、何が真実なのかよくわからないという雰囲気が漂っている話の中で、あそこは唯一、シビアな場面だった。自分が正しいことを示すために自決しろ(実際のお芝居の中の台詞とは微妙に違うけど)、と教えられて、戦争で命を落としていった多くの人々の犠牲の上にあるいまのニッポン。でも、ニッポンっていったい、そもそも何者なのか。そしていまのニッポンはどんな国になっているのか。香港の人の考え方は中国本土の人とは違う部分もあるかもしれないけれど、香港に行って、現地の人の口から中国人の日本人観をいろいろ聞いて、帰ってきたばかりの私にはかなりタイムリーというか、日本と中国のこととか、いろいろと考えさせられることが多かった。野田さんが、一連の尖閣諸島の事件を機にこの話を書いたとは思わないし、もっと以前から頭の中にあったテーマなんだろうと思うけれど、それにしてもタイムリー。マスコミのこと、自分というものについても、いったい何者なんだろう、と考えさせられる。もう1回くらいかみしめながら観たいけど、チケットはぜったいとれなさそうだしなあ。
 役者陣はみんな大熱演。ぶっきー(妻夫木くん)の演技はどうしても数年前の『キル』を思い出してしまった。蒼井優ちゃんは顔がちいちゃくてキラキラ跳ねている。チョウソンハも高田聖子も、銀粉蝶さんも藤木孝さんも相変わらずいい。野田さんは久々の男役(ハトぽっぽだけど)。『表に出ろい!』の黒木華、太田緑ロランスちゃんもがんばっていた。
 なんか、時間が経つほどにいろいろ、ああ、あそこはああいう意味だったのか? と思い出すことがありそうなお芝居だと思うんだけど……やっぱりもうチケットとれないんだろうなあ……。

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ホール入り口近くのポスター

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