« 感劇話その150 痛快な野田節を堪能__NODA・MAP番外公演『表に出ろいっ!』@東京芸術劇場小ホール1  | トップページ | 終わってみればちょいバタバタの10日間だった……。 »

2010年9月18日 (土)

感劇話その151 新作『鰯売恋曳網』が華やか。文楽九月公演@国立劇場 

(“感劇”は、感激と観劇を合わせた勝手な造語です。念のため。文楽、歌舞伎、落語、お芝居その他ライブの感想をまとめています。) 

 今月は文楽のある月。今週はたまたまそれにお芝居や落語会が入って、仕事が一段落した時期にも関わらず、なんだかんだ劇場通いで外出が続いた。文楽は第二部を先週、第一部を今日拝見(拝聴)。今月はとくに第一部の新作文楽『鰯売恋曳網(いわしうりこいのひきあみ)』を楽しみに出かけた。『鰯売恋曳網』は、三島由紀夫作の新作歌舞伎(最初に上演されたのは昭和29年)を織田紘二(彼は三島の歌舞伎版『椿説弓張月』上演の際に演出助手を務めた人だそう)が、三島の意図にそって脚色、文楽の台本に改めたという作品。作曲は、現役の豊竹咲大夫、鶴澤燕三のお二人で、振り付けは歌舞伎舞踊の藤間勘十郎という、原作のほかはまさに今回初公開の作品だ。ストーリーは、御伽草子をもとにした擬古典。鰯売りの猿源氏と、丹鶴城の姫から傾城となった蛍火の、微笑ましい恋のお話。蛍火の頭(かしら)や衣装はかわいらしく、猿源氏も和歌の素養があるなかなかのイケメンで、この二人の初々しさに周囲の人の人情も加わって、ほっこり微笑ましいお話になっている。鰯売りの呼び声がピリリといいアクセントになっていて、短いけれど、楽しい豊かな内容だ。昨年の「テンペスト」に続き、新作のヒットが続いている感じ。新作だけど、言葉も曲も人形の動きも古典洋式でしっくりとまとまっている。三島由紀夫が古典芸能や伝統芸能に造詣が深かったのは有名だが、改めてその才能を感じさせられた気がした。
 第一部のもう一つは『良弁杉由来(ろうべんすぎのゆらい)』。これは明治期に作られた新作だとか。幼い子供を鷲にさらわれてしまった母の苦悩と、三十年後、成人して大僧正となった息子との再会を描いている。息子の姿を追い求めてさまよう母の哀れさを文雀さんが静かに演じている。第二部は『勢州阿漕浦(せいしゅうあこぎうら)』と『桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)』。『勢州……』は江戸時代からある演目だが、見るのは初めて。母の病に効くとされる魚をとるために殺傷禁断の場所で漁をした平治。そこで偶然にも、かつて主君が探していた(平治はもともとは侍)十握の剣(三種の神器の一つ)が網にかかる。物語はそこから、親への孝行と主君への忠義という二つのテーマが重なって展開。切り場は住大夫が渋く聞かせる。
 『桂川……』は数回観ているが、最後の段の、帯屋の長右衛門がお半を背負って入水するシーンは初めて見たかもしれない。長い“帯屋の段”の前半は、軽妙に、それでいて味わい深く聞かせる嶋大夫が秀逸だった。嶋大夫さん、いつも独特の渋い声が魅力的だが、今回はとくに、チャリ場(滑稽な場面のこと)で丁稚の長吉や弟の儀兵衛の可笑しさを際立たせていて、とても楽しめました。しかし、長右衛門という人には今回もあんまり同情できなかった。女房のお絹(紋寿さん)は気丈な姿がかわいそうで、長右衛門と心中するお半(蓑助さん)は哀れな中にも小悪魔的な美しさが漂っていた。

201009201247000

『鰯売......』の一場面。この写真が大きいポスターにもなっていた。

« 感劇話その150 痛快な野田節を堪能__NODA・MAP番外公演『表に出ろいっ!』@東京芸術劇場小ホール1  | トップページ | 終わってみればちょいバタバタの10日間だった……。 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 感劇話その151 新作『鰯売恋曳網』が華やか。文楽九月公演@国立劇場 :

« 感劇話その150 痛快な野田節を堪能__NODA・MAP番外公演『表に出ろいっ!』@東京芸術劇場小ホール1  | トップページ | 終わってみればちょいバタバタの10日間だった……。 »