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2010年9月17日 (金)

感劇話その150 痛快な野田節を堪能__NODA・MAP番外公演『表に出ろいっ!』@東京芸術劇場小ホール1 

(“感劇”は、感激と観劇を合わせた勝手な造語です。念のため。文楽、歌舞伎、落語、お芝居その他ライブの感想をまとめています。) 

 数日前に行った野田地図の舞台『表に出ろいっ!』の話。事前に見た人からかなりおもしろいという話は耳に届いていたが、評判通り、久々に野田さんのエネルギッシュな舞台を堪能させてもらった。ものすごいスピードで飛び交う会話の応酬と、身体と身体のぶつかり合い。そのスピードと迫力は後半までほとんど落ちることはない。父、母、そして娘の3人家族はそれぞれテーマパーク、アイドルのコンサート、ファストフード店のグッズ付き商品を偏愛していて、それぞれの大切な時間を過ごすべく外出しようとするが、その日は出産間近の飼い犬の世話をするために、誰か一人は留守番をしなくてはならない。3人はそれぞれ、自分が愛するものは深く信じているが、自分が共感できないものに対しては厳しく否定し、一歩も譲らない。それぞれが外出したさに自分の正当性を主張し、口論がエスカレートして激しい喧嘩となり、あげくの果てには3人とも鎖で縛り合って、誰も表に出ることができなくなってしまう。
 え、たかがそれくらいのことで……と、他人が思ってしまうようなことでも、信じるものにとっては、それは何ものにも換え難い、自身の存在意義といってもいいくらいの大切なもの。それを否定されることが、ひいては戦いにまで発展してしまうという過程は、一見滑稽なようで、ある種の恐ろしさをしっかり含んでいる。人間にとって、信じるということはどういうことなのか。信じることとだまされることの境界はどこにあるのか。そんな深刻なテーマを突きつけられる。後半、前作の『ザ・キャラクター』につながる展開も出てきて、そこにはカルトの問題も絡んでくる。
 父親が能の宗家なので、家は防犯・防音対策もばっちり。そんな屋内に家族3人が閉じ込められ、助けを呼ぼうと叫んでもまったく外には聞こえない。時間が経過していくうちに次第に喉が渇き、体力も失われて、朦朧とする意識の中で、翌朝、静かに玄関の扉が開く。鍵のかかっていないドアから誰かが侵入しようとしているのだった。そこで思わず父親が口にする「ここから外に出してくれるなら、泥棒でさえも私にとっては神だ……」というような台詞がまた意味深だ。父親役の勘三郎さんは、母親役のパワフルな野田さんとがっぷり四つで、この二人の息の合い方、間の取り方が絶妙。1+1が4にも5にもなってパワーが炸裂する。娘役の太田緑ロランスも二人にストレートに挑む感じで見劣りしないし、これまたあっぱれ。そして、衣装のワンピースの背中から見えるつるんとした背中といい、おばさん的喋りの流暢さといい、野田さんがすっかり女性に見えてくるから不思議。痛快で、思い切り笑い続けたあとに、ものすごくいろんなことを考えさせられるお芝居だ。ほんとにおもしろかった♡。

201009141730000

劇場入り口付近にこんな派手な幕がお出迎え

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