« さて、オリンピック開幕 | トップページ | ハシゴ酒@野毛 »

2010年2月14日 (日)

感劇話その132 こんな悲劇もあるのです……。__2月文楽公演第二部

(“感劇”は、感激と観劇を合わせた勝手な造語です。念のため。文楽、歌舞伎、落語、お芝居その他ライブの感想をまとめています。) 

 文楽東京公演。昨日は第二部を見てきた。演目は『大経師昔暦(だいきょうじむかしごよみ)』、通称“おさん茂兵衛”の世話物である。近松の原作で、罪もない人々が思わぬ出来事からあれよという間に悲劇の渦に飲み込まれていく不条理さがたっぷりと描かれる。とはいえ、もとは京都で実際に起こった密通事件で、密通した男女とその仲介をした女の3人が処刑された事件を脚色したものだというから、ちょっとびっくり。昔は密通の仲介役も厳罰に処されていたのである。
 大経師とは朝廷の御用を勤める表具師のこと。その妻おさんの親が金策に困っているのだが、娘の夫には借り辛いという親の雰囲気をおさんが察し、それを手代の茂兵衛に相談したのが、ことの始まり。そこから話が思いがけない方向に展開していき、まったくのハプニングから、相手を取り違えて密通してしまうおさんと茂兵衛。どうして最後まで人違いだと気づかないのか、とか、そのへんを疑問に思っては話は進まない。とにかく間違い、ミステイクなのだから、おさんと茂兵衛の間には恋愛感情などなにもないのだが、そのまま二人で逃亡して、挙句に捕えられてしまう。さらにそこに、茂兵衛に以前から好意を持っていた下女のお玉もからんできて、話はさらなる悲劇を生む。
 観終わったとき、「誰も悪くないのにどうしてこんなことに……」と、思い切り不条理さを感じずにはいられない話だ。でも、そこに、自分たちのことが原因で娘を罪人にしてしまった両親の深い苦悩や、同様にお玉を思う伯父、梅龍の嘆きが加わって、人間の愚かさ、哀れさなどを写し出す深いドラマが描かれていくところは、さすが近松という感じである。二段目「岡崎村梅龍内の段」の切り場は住大夫がじっくりと聞かせてくれる。住大夫は相変わらず絶好調のご様子だ。また、一段目のラストで、おさんと茂兵衛がお互い人違いで肌を合わせてしまったことがわかってはっとする場面、「やあ、おさんさまか」「茂兵衛か」で、舞台の照明がぷっつりと消え、さーっと幕がひかれる。この終わり方、というか続き方はなかなかにドラマチックで、一体この先どうなるんだろう、という思いをかきたてられる巧みな演出だと思った。

201002151450001


プログラムより。逃げるおさんと茂兵衛

« さて、オリンピック開幕 | トップページ | ハシゴ酒@野毛 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 感劇話その132 こんな悲劇もあるのです……。__2月文楽公演第二部:

« さて、オリンピック開幕 | トップページ | ハシゴ酒@野毛 »