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2010年1月29日 (金)

感劇話その130 これを聞かないと1月が終わらない。志の輔らくごin PARCO2010 

(“感劇”は、感激と観劇を合わせた勝手な造語です。念のため。文楽、歌舞伎、落語、お芝居その他ライブの感想をまとめています。) 

 毎年恒例のお正月のパルコの志の輔。なんだかんだもう4年くらいは続けて聞いているだろうか。今年は終演日まで残すところあと2日と迫った今日、行ってきた。
 1席目『身代わりポン太』。新作だった。舞台は富山県のある村という設定。地域活性化の切り札として進行中だった「たぬきの里プロジェクト」が事業仕分けで凍結となってしまい、シンボルとして建設中だった“たぬきのぽんぽこタワー”が下半身まで建設されたところで工事が打ち切りに……。おろおろと途方に暮れる村長のところに救世主(?)の掃除係のおばあさんが現われて……。
 昨年の事業仕分けの見学の記憶もまだ新しいところにタイムリーなお噺で、凍結でこんなふうに大騒ぎになっている自治体もけっこうあるんだろうかなあと思いつつ、しかし大笑いできて、ほほえましい気分で終わる。昨今の世相を反映しつつ、政治家の抱えるしがらみなんかもぷっと笑えるギャグにして楽しい新作を作ってしまう志の輔師匠。小気味良く鮮やかなインパクトのお噺でスタート。
 2席目『踊るファックス2010』。落語仲間のかよちゃんが、前々からおもしろいおもしろいと言っていて、私はまだなぜか一度も聞いたことがなかった噺だったが、ついにここで。2010というから、細かいところ(寅年ならではのコメントなど)は今年版なんだろうけど、大筋は変わっていないようで。間違って送られて来たFAXから巻き起こるドタバタコメディ。吉田薬局の店主であるお父さんと、FAXを間違えて送ってきた“まみこ”とのFAXバトルがエスカレートしていく様子がちょー愉快。息子とお母さんの言葉もとぼけていて、こんな家族がほんとにいたら楽しいよなあという感じで。落ちも効いているし。こ〜んなお噺だったのね。たしかに、“これ明らかに間違いだよね”と思うような留守電メッセージが入っていたり、ファクスが送られてくることって、時々ある。たしかメールでも前にそういうの、あったなぁ。間違って送った方が悪いんだから放っておこう、というときもあるけれど、内容によってはこの吉田家のような対応をすることもあったりするし、で、そういうときの相手の態度もさまざまだったりして……笑いながらもなんかいろんなことを考えさせられる噺だった。1枚のFAXからこんな噺が展開していくなんて、志の輔師匠、やっぱりすごいわ。
 3席目『中村仲蔵』。一人の歌舞伎役者が(役者のランクの)最下級から名題にまで上り詰めていく過程とともに、『仮名手本忠臣蔵』5段目に登場する斧定九郎の扮装や役どころが今のようなスタイルになったエピソードが語られる。歌舞伎で何度か見ているあの定久郎のキャラクターが初代中村仲蔵によって、こんなふうにして編み出されたものだとは知らなかった。
 師匠と血縁関係も何もなく、実力で名題の地位を手にする仲蔵。しかし、周囲のやっかみやいじめによって、名題としての初舞台で振り当てられたのが、斧定九郎という、はっきりいってぜんぜん大したことのない役だった。でも、自分を名題に推挙してくれた5世団十郎の顔をつぶさないためにも、これまでにない定九郎を演じようと決意する仲蔵。そして生まれる“白塗りの手脚と顔で、黒紋付に裾はしょり”という定九郎の扮装。仲蔵が演じる前までは、定九郎はもっと山賊のようなむさい出で立ちだった。一人の浪人との出会いをきっかけに起きる仲蔵のひらめきと創意工夫によって、登場から10分もすれば撃たれて殺されてしまうサエナイ悪人の定九郎が、華のある色悪的なキャラに生まれ変わって大当たり。それは仲蔵の出世作となり、その後、若手花形役者の役どころとして定着していったのだという。
 もとは三遊亭円生の噺だそうだ。パルコの舞台には歌舞伎座のような花道はないが、花道の登場幕がさーっと開くときの鉄の音や拍子木の音が効果的に使われ、忠臣蔵5段目の舞台が頭の中に生き生きと描き出される。歌舞伎の忠臣蔵を知らない人にも臨場感たっぷりに引き込まれる展開だと思う。仲蔵を演じる志の輔も、ときに見栄を切ったりしながら歌舞伎風に演じたりしつつ、しかしちゃんと落語として展開させていく。そしてじんと目頭を熱くさせるクライマックス。一人の役者が成長してく過程を描くシリアス一辺倒な人間ドラマかと思いきや、芝居を観に来ていた客が後で感想を語るあたりなんかは可笑しさいっぱいだし、1時間を越す長い噺もぜんぜんあきさせることなく、最後までぐいぐいと心を引っ張っていく。まさに志の輔の真骨頂という感じだった。あー、今年もこうやって落語の人たちに心をほぐしてもらうのかなあと、また次の高座が楽しみになってくるのでありました。

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チラシ(左)と、本日の演目。

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