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2010年1月12日 (火)

感劇話その128 新春浅草歌舞伎2010

(“感劇”は、感激と観劇を合わせた勝手な造語です。念のため。文楽、歌舞伎、落語、お芝居その他ライブの感想をまとめています。) 

 お正月恒例の浅草歌舞伎。今年は浅草で歌舞伎が復活して30年目なんだそうで。先週、第一部を、そして今日、第二部を見てきた。演目は、第一部が『正札附根元草摺(しょうふだつきこんげんくさずり)』、『元禄忠臣蔵』、『忍夜恋曲者(しのびよるこいはくせもの)』、第二部は『奥州安達原(おうしゅうあだちがはら)』、『猿翁十種の内 悪太郎』。
 『正札……』は曽我五郎と小林朝比奈という二人の引き合い(引っ張り合い)がユニークな舞踊。草摺とは鎧の下に付いている防具のことで、これを引き合って力競べをする様子が踊りになっている。お話としては、父の敵に対面するために駆け出そうとする五郎を朝比奈が必至で留めようとして引き合いになるわけだが、そういう緊迫感というよりは、滑稽さがあって華やかで、見て楽しい舞踊になっている。五郎の亀治郎と朝比奈の勘太郎の息も合っている。『元禄忠臣蔵』は同じ忠臣蔵での話でも『仮名手本忠臣蔵』と違ってあんまり(私は)馴染みがないので新鮮。赤穂浪士の一人である富森助右衛門(亀治郎)とその妹お喜世(七之助)、後に六代将軍家宣となる徳川綱豊(愛之助)などが出てきて、御浜御殿(現在の浜離宮)を舞台に話が展開する。七之助が美しい。亀治郎はなんだかやっぱり安心して見ていられる。愛之助はやがて将軍となるイケメンの殿様で、吉良の身代わりとして能の『望月』の装束に身を包んで現れるところは清々しい美しさがあった。
 『忍夜……』は勘太郎、七之助の兄弟がそれぞれ大宅太郎光国、滝夜叉姫となって踊りや立ち回りを見せる。これも初めてだったが、江戸後期に初演された古典の名作らしい。滝夜叉姫は平将門の娘でガマの妖術使いなので、妖術を使うシーンではスペクタクルな舞踊もあり、セットが動いて屋根の上のシーンになったり、巨大なガマが現われたりと、ダイナミックな見せ場もある。派手だし、外連味のある演出、歌舞伎らしい歌舞伎、という感じでとても楽しめた。ガマが舞台の中心に出て来て立ち回るシーンは、昨年秋に歌舞伎座で見た『蜘蛛の拍子舞』の蜘蛛を思い出した。今回のガマはあの蜘蛛のように見栄を切ることはなかったが、けっこう活躍していた。
 『奥州安達原』は文楽でもおなじみの演目。豪族の安倍貞任、宗任兄弟が、源義家に復讐を挑む話を主軸に、復讐劇に巻き込まれる家族の悲劇などが描かれる。目の見えない母、袖萩(勘太郎)に娘のお君(上手な子役ちゃんだった)が雪の中で自分の着物を脱いで掛けてあげるシーンは文楽でも泣かせるところだけど、今回も不覚にもほろり。袖萩の母、浜夕役の歌女之丞さんもよかった。袖萩の夫である安倍貞任(勘太郎が二役)が桂中納言という勅使に化けて登場するシーンがあり、正体がバレると衣冠束帯の姿から着物を脱いで本性を現す「ぶっ返り」という演出があるのだが、ここは見応えがある。何層にもなった着物を一枚ずつ、筍の皮を剥ぐように脱いでいくと、その着物がリバーシブルになっていて(たぶん)、脱ぎながらド派手な安倍貞任の装束が完成するという(なかなか文章ではうまく伝えられませんが、見るとすぐわかる)もので、スムーズに変わっていくのをキメるのはなかなか大変そうな演出だ。
 『悪太郎』は狂言を舞踊化したもので、澤瀉家の家の芸。亀治郎の悪太郎は大酒飲みで、酔って千鳥足ながらもテンポよく踊る様子は、ジャッキー・チェンの『酔拳』を思わせるようでもあり、笑いに溢れた楽しい演目。第二部はお席が花道のすぐ脇という絶好の位置で、役者の走る衣擦れの音を間近に聞き、悪太郎が振り回す長刀が目の前に迫ってくる感じで、臨場感もたっぷりに堪能させていただきました。

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プログラムの表紙と裏表紙。今回は出演者の写真が羽子板になっている。私も中で一部、取材原稿を書かせていただきました。


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これまでの浅草歌舞伎のポスターが一挙公開されているのもおもしろい。

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