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2009年11月30日 (月)

映画見て元気になる。

 大学時代の同級生A子さんと一緒に映画『ファッションが教えてくれること』を見てきた。超久々の映画館&初めての新宿のシネコン。夜の回だったせいか、けっこうガラガラだったがシートは快適だった。
 映画は、アメリカ版「ヴォーグ」の名物編集長で、あの『プラダを着た悪魔』のモデルといわれるアナ・ウィンターに密着しながら、彼女と「ヴォーグ」のスタッフたちの仕事ぶりを描いたドキュメンタリー。とてもよくできていた。というか、ここまで密着してよく撮れたなあと感心させられたし、その内容は感動的だった。
 ファッション誌にとって、毎年9月号は一年の始まりの号とされ、ファッション特大号となる。アメリカ人女性の10人に一人、約1300万人が読む米版「ヴォーグ」。その入魂の9月号の制作過程を、カメラは5ヵ月前の準備段階から追っかけ、会議や撮影、シャネルやサン・ローランなどクチュール・ブランドとの打ち合わせ、目玉企画の若手デザイナーの人選、などなどの様子を細かく映し出していく。
 超多忙な分刻みのスケジュールの中で、瞬時に、極めて冷徹に物事の判断を下す敏腕編集長のアナに対し、天才的な感性でファッションのイメージを美しい映像に紡ぎ出すクリエイティブ・ディレクターのグレイスはまさに職人といった感じで、この二人の静かな攻防というか、見えないところでのぶつかり合いがすごくおもしろい。お互い自分の仕事にものすごくプライドを持ちつつも、お互いを深く信頼し合っているから、一見、対決姿勢に見えてもそこからさらにもっとすごいものが生み出されて、最終的には、よりクオリティの高いページができあがっていくことになる。
 何百万円もかけて撮影した写真をアナが簡単にボツにできるのも、それまでの実績で彼女にそれだけの権限が与えられているからだし、彼女の判断に絶大な信頼が寄せられているからだ。でも同時に、それだけ重大な責任を負っているというわけで、だからこそ絶対に妥協をしない、したくないというのもあるのだろうけど、そんな仕事に日々対峙する人の気持ちとはどういうものなのか。仕事において妥協をしない、したくないという想いはわかるつもりだが、自分はそれだけ大きなお金を左右するような立場につくことはないから、果たしてどんなものなのか、想像を絶する。そして、やり直しで再撮になったことを罵り嘆きつつも、前よりもぐんといい内容の撮影をしてページを作り上げるグレイス。このへんの、それぞれの仕事に向かう姿勢や気持ちというのが、たまりませんな。
 彼女が席に着かないとコレクションのショーも始まらないというアナのファッション業界における堂々たる女王ぶりもよくわかったし、グレイスの尊敬に値するような仕事ぶりもよく伝わってきた。私は、自分はどちらかというと職人タイプだと思うので、どうしてもグレイスのほうに、より心が動かされた気がする。それと、ジャンルとか動かすお金の額はぜんぜん違っても、雑誌作りの世界で起きていることは似たようなものなんだなということも感じた。自分は編集者出身だし、今も編集から関わる仕事をする機会があるから、見ていてわかりやすかったんだけど、私たちの日々の仕事でも、たとえばあらかじめ撮影場所として決めておいた現場にいざ行ってみたらその時の雰囲気やカメラマンの考えや時間的な問題などさまざまな現場判断で実現不可能になったり、とか、自分が一生懸命やって作り上げたものが編集長の一声でボツとかやり直しになったり、ということもある。いろんな人が関わって一つの雑誌を作り上げていく工程は予想通りにいかないことばかりだ。まあ、ボツにするとかってことに関しては、そのときの予算によっても違ってくるのだろうけど(たとえば予算がなければ、気前良く再撮もできないし)。 
 でもやっぱり、雑誌作りは楽しいよ。ファッションに限らずとも、自分が信頼するスタッフを集めて、内容をあれこれ考えて、撮影して、ページを構成して……あの作り上げていく作業の厳しさと大変さと楽しさが改めて思い出されて、なんか、またおもしろい雑誌作り、したいなあという気分にさせられる映画だった。某ファッション・ブランドのお仕事もしているA子は、「恐れず前へ進め、というメッセージをもらった」といっていた。この映画が撮られたのは2007年だそうだから、リーマン・ショックの一年前。ファッション業界も雑誌業界もいまは不況で元気がないから、ぜんぜん別の世界の出来事のように見える部分もあるけれど、私はなんだか心に元気をもらえたような気がする。

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