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2009年11月11日 (水)

感劇話その123 心に染みた『高瀬舟』__志の輔noにぎわい(11月8日)

(“感劇”は、感激と観劇を合わせた勝手な造語です。念のため。文楽、歌舞伎、落語、お芝居その他ライブの感想をまとめています。) 

 それにつけても日曜日のトリニータはよかった。横浜Fマリノス戦で2−1とアウェー初勝利。J2降格が決まり、天皇杯で千葉に敗退した後でも、そこから気持ちをしっかり切り替えてがんばったんだと思う。次につながるようなアウェーの勝ち点3獲得だ。って、今回も応援に行ったわけじゃないけど、外出先から携帯のスポーツサイトで時々、試合速報をチェックしつつ、帰宅後にインターネットで戦評を確認するとそんな感じだった。この調子で残り試合もがんばってほしいなあ。
 その日曜日の夕方は、同じ横浜でもにぎわい座の志の輔の会にいっていた。チケット・クイーンのかよちゃんがせっかくとってくれたチケットだったしね。
 開口一番は立川メンソーレ(沖縄出身)で『千早振る』。百人一首の在原業平の歌(「ちはやふる神代もきかず竜田川 からくれなゐに水くくるとは」)の意味を聞きに、八五郎がご隠居をたずねる。ご隠居は知ったかぶりをして、ぜんぜん違う、相撲取りと遊女の話に仕立て上げてしまう。平安時代の和歌なのに江戸時代の力士や遊女の話になることからして、よく考えたら変なわけだが、八五郎は疑問も抱かず、ご隠居の勢いに負けて、最後までひととおり素直に聞いてしまうという、へんてこな話だ。落語ってたまにこういう「え、なんでそうなるの? それあり得ないじゃん??」みたいな、不条理というか、不可思議というか、へんてこりんな展開の話がある。
 志の輔の1席目は『買い物ぶぎ』。ドラッグストアに買い物に行った男と店員のかみあわない話がちょーおもしろい志の輔の新作落語。久々だったけれど、何回聞いてもやっぱり笑ってしまう楽しい噺だ。トイレの消臭剤、家庭用お掃除洗剤、歯磨き粉、風邪薬などの、もしかしたら誰もが一度は抱いたことがあるかもしれない小さな素朴な疑問をストレートに店員にぶつける男と、その対応にいちいちドギマギする店員。たとえば、「トイレの消臭剤“森の香り”って、トイレの匂いを消すんだったら森の香りまで一緒に消えちゃうんじゃないの?」とか、「“(これ一本で家中のお掃除オッケーの)ただのユアペット”があるなら、“バス・ユアペット”とか“ガラス・ユアペット”とかいらないんじゃないの?」とか。くだらないようでいて、なーるほど、たしかに、と思って思わず吹き出してしまうようなネタで次々と迫る男(本人は至ってマジ)の痛快な買い物コメディ。顔の筋肉も否が応にもほぐされて、ウォーミングアップには充分すぎるほど。
 仲入り後、忍者のコントをはさんで志の輔の2席目。「これは落語でも、講談でもありませんし、笑いも一切ありません」といって、始まったのは森鴎外の『高瀬舟』だった。しーんと水を打ったように静まり返った会場で語る志の輔。ところどころアレンジを加えているようなので、朗読劇というわけでもない。その日暮らしの貧しい生活の中で病にかかり、二人暮らしの兄に苦労をかけまいとして自殺を図ったものの死にきれずに苦しむ弟と、その手助けをした兄。そして、罪人となった兄を護送していく同心......。話が終わると、唸るような声とともに拍手が巻き起こった。むかーし読んだお話で、細かいディテールを忘れていたが、志の輔の語りによって、なんともいえない心に染み入る噺になっていた。
 安楽死とか、足ることを知る、ということがテーマになっていて、裁判員制度が始まる際にこの話がたびたび取り上げられたことがきっかけで再読し、それを高座でやってみたくなったので……と語っていた志の輔。これは甚だうがった見方かもしれないが、互いを思いやる兄と弟が出てくる『高瀬舟』の話をしたのは、それだけではなくて、数日前に亡くなった弟弟子の立川文都さんへの思いもあったのかもしれないと思った。話し終えた後の最後の挨拶でも言っていたが、文都さんとの思い出話とか、奇しくも文都さんと同じ日に亡くなった円楽師匠のことにもふれていて、志の輔の真打ち昇進の落語会の口上に、談志と円楽と米朝という、今考えると夢のような人たちが来てくれたのだそうだ。二席目は黒紋付姿だったのは、お二人への思いもあったのだと思う。
 それにつけても昨日から腰が痛くて、今日は湿布を貼っている。昨夜からのザーザー雨とか、また長時間座り続けているのがよくないのかも。ちょっと身体を動かそう。原稿書きウイークは続く。

200911082002000


斜めからで、うまく撮れなかった......。

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