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2009年9月26日 (土)

感劇話その112 予想以上によかった文楽版『テンペスト』__9月文楽公演

(“感劇”は、感激と観劇を合わせた勝手な造語です。念のため。文楽、歌舞伎、落語、お芝居その他ライブの感想をまとめています。)
 今月は文楽東京公演の月だった。今回は三部構成。

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第一部は『鬼一法眼三略巻(きいちほうげんさんりゃくのまき)』。『義経記』をはじめ、いわゆる義経と弁慶について書かれた作品、伝説などをもとにして江戸時代に書かれたお話。弁慶の子供時代から牛若丸に出会うまでの出来事が描かれる。


 鬼一法眼は兵法家で、天狗を装って鞍馬山で牛若丸に兵術を教えた人物。また、乱暴者の鬼若丸は母の敵を討つために自ら剃髪して武蔵坊弁慶となる。その敵とは、平清盛。つまり、牛若丸だけでなく弁慶の敵も清盛という設定になっている。天狗姿で現れる鬼一法眼の姿はなかなか迫力がある。

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第二部は『伊賀越道中双六』と『艶容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)』。定番の人気作品の贅沢な二本立て。『伊賀越……』は沼津の段、『艶容……』は酒屋の段と、それぞれメインの段を上演。



 『伊賀越……』の切り場は住大夫がさすがの語りでじっくり聞かせる。勘十郎さんの遣う平作は、おぼつかない足取りがすごくリアルで、知らず知らずのうちにそのキャラクターに引き込まれていく。平作の死に際に響く胡弓の音色がなんとも物悲しくて涙をさらに誘う。

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第三部は新作文楽。シェイクスピアの「テンペスト」の文楽版で『天変斯止嵐后晴(てんぺすとあらしのちはれ)』。劇作家、坪内逍遙が翻訳した『テンペスト(あらし)』をもとに、山田庄一が舞台を中世の日本に置き換えて脚色、鶴澤清治が作曲を担当した平成の新作だ(初演は平成4年)。

 今回の公演ではこの第三部が新鮮で、特によかった。以前に見た新作文楽が自分的にはいまいちだったので、“新作”になんとなく不安とアレルギーのようなものを感じそうになっていたのだが、これはやっぱりオリジナルがシェイクスピアだからか、話がおもしろいし、しかもテンポもよく、言葉もとてもわかりやすい。これは脚本、演出の力だと思う。文楽の時代物らしさもちゃんとありつつ、通常の文楽では出てこない妖精(名前は、英理彦)が登場して宙を舞ったり(これがかわいくて楽しい)、最後に一人で舞台に残った阿蘇左衛門が観客に語りかけたりと、斬新な演出が随所に見られ、舞台装置も見応えがある。半獣人の泥亀丸(でかまる)や、すずめやペリカンを思わせる妖精たちなど、愉快なキャラクターも出てくるので子供が見ても楽しめそうだし、約2時間があっという間に感じられた。こんな新作ならどんどん見たい。

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