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2009年8月20日 (木)

感劇話その107 セットの中を縦横無尽に__柳家喬太郎独演会

 先日、喬太郎の独演会に行ってきた。喬太郎はルテアトル銀座で舞台に出演中で(役者としては初舞台らしい)、そのお芝居『斎藤幸子』のセットをそのまま生かして、その中で落語をやるというスタイル。この手法は以前、小米朝&花緑さんの会で経験したことがあるが、芝居のセットの中に高座を作るというのはなかなかにおもしろいやり方だと思う。せっかくこんな立派なセットがあるのだからと、座布団の上だけじゃなくてセットの中を自由に動き回って落語をやったり、とかもできるわけで。まあ、そんなことしない人もいるだろうけれど、喬太郎は今回、オープニングの登場の際(屋根の上の物干し台から登場)と二席目でそのあたりにもトライしていた。
 一席目は『お菊の皿』。これはやはり夏場の定番なのか、この夏、3度目だ。もちろん喬太郎で聞くのは初めてだけど。前に聞いた志の輔のバージョンと比べると、お菊さんの登場がショーアップされてからの噺のほうに時間を多めに割いている感じだった。照明も派手に使っていたのは、やっぱり芝居のセットならでは、だったのかな。喬太郎は歌まで(1コーラス!たしかお菊さんのブルースだったか何か......)歌っていたし。
 お次は瀧川鯉橋さんが出て来て『だくだく』。なにもない長屋の壁に絵師が室内の風景を書き込んでいくシーン、まくしたてる感じでどんどん進んでいくのがおもしろかった。インテリアというか調度品が江戸の頃のもののようなので、知らない単語も多かったんだけど、そのへんをあまり気にしなくても勢いのある雰囲気は楽しめた。続いて喬太郎の二席目は彼の新作の『ほんとのこというと』。これは現代の話で、落語というよりもまさに一人芝居みたいに舞台のセットの中を転げ回り、移動しまくって演じていた。あれを見る限り、喬太郎は役者もやれると思ったけど。内容はかなりブラックジョークというか、薬物とか売春とかの話が出てきて、最後に向けてその勢いがどんどん激しくなっていって、ちょっと笑っていいのかどうなのか、という部分もあるんだけど、たぶんそういうところが喬太郎ならではの世界というのか、真骨頂なんだろうなと思った。
 仲入り後、寄席みたく江戸曲独楽の三増紋之助さんが登場。独楽といっしょにトトロのぬいぐるみも回して回して、会場は大盛り上がりだった。紋之助さん、大ホールという寄席とは全然違う雰囲気の場所に最初はとまどっている様子だったけど、なんのなんの、しっかりみんなの心をわしづかみにしていた。そして喬太郎の三席目は『心眼』。それまでの楽しいお祭り気分を一掃するかのようなシリアスな内容のお噺だ。目が不自由な按摩の梅喜が薬師如来に日参し、満願の日についに目が開く。すると……。人間の心のダークサイドを容赦なく暴き出すような内容で、怪談とは違う意味でちょっとぞっとしてしまう。喬太郎の表情も真に迫って怖い……。下げは「目が見えないとは妙なものだ、寝ているうちだけよおく見える……」。これは圓朝作のお噺らしいけど、圓朝って、聞くほどにすごい人だったんだねえ。というわけで、大いに笑わせたりぞっとさせたり、歌ったり、変化しまくる喬太郎であった。

200908201326000


こんなふうに舞台で斉藤由貴ちゃんと共演しているようです。

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