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2009年5月20日 (水)

感劇話その98 人形に見つめられてどっきり。5月文楽公演第一部

 今月は東京で文楽公演の月。先日、第一部をみてきた。今回は、久々に(というか、文楽人生で2度目)最前列のお席だった。今月は、大阪の国立文楽劇場開場25周年を祝して、最初の演目は『寿式三番叟』。祝賀の際に欠かせない祝儀曲で、これまでにお正月とか、なんだかんだ数回見ているが、今回は今まで見た中でいちばん大がかりだった。これまで見たのはいずれも若干簡略化されていて、人形も三番叟(三番目に登場して踊る人のこと)のみが出るパターンだったのが、今回は、翁、千歳という2人に三番叟が2人と、合計4人のフル出場で、大夫と三味線が舞台の正面に2列で並ぶという豪華な演出。しかし、席が前過ぎて、舞台の奥に並ぶ雛壇の前列の三味線さんたちの顔はいっさい見えなかった……その代わり、お人形は近い近い。衣装の柄や糸の色合いなどがものすごい迫力で目に迫ってくるし、顔の表情もすごくリアル。文楽ではお人形の頭の部分を「首」と書いて「かしら」と呼ぶのだが、イケメン系の「若男」の首を使った千歳を見ると、まるで目と目が合ってじっと見つめられているようで思わずドッキリしてしまう。臨場感たっぷりで、三番叟2人が激しく踊り続けるところは人形遣いの勘十郎さんや玉女さんの息づかいまで聞こえてきそうな感じだった。
 二つ目は『伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)』。実話の事件をもとに作られた話で、まず歌舞伎で大当たりしたものが、後に人形浄瑠璃に移行したらしい。名刀「青江下坂」の折り紙(鑑定書)を取り戻すために奮闘する武士、福岡貢があやまって遊郭の仲居を斬ってしまい、その後、放心状態となって次々と十人も斬ってしまう話。最初に斬られる仲居、万野の憎々しさがいい。この人形の首は「八汐」というタイプで、『伽羅先代萩』に出てくる敵役の悪女、八汐や『加賀見山旧錦絵』の敵役、岩藤でも使われているように、一目見て、意地悪そうな悪人面。女性のヒール専用なんだけど、私はけっこうこの「八汐」の首が好きだ。今回も、遣う蓑助さんのうまさもあって、万野のしぐさや表情が本当に、笑っちゃうくらい憎々しい。
 三本目は『日高川入相花王(ひだかがわいりあいざくら)』。歌舞伎では「紀州道成寺」として知られる演目で、安珍・清姫伝説の能楽作品『道成寺』をもとにして作られているお話。嫉妬に燃え狂う清姫が蛇の身体になって川を泳ぎ渡るシーンを紋寿さんが迫力満点に見せてくれる。ここでは清姫の顔が鬼のようにチェンジするときに、ガブと呼ばれる首が使われている。頭に生えた角、金色の目と、耳まで避けた口とギザギザの歯。きれいな清姫の顔が一瞬にしてガブに変わると、ぎょぎょっとする。間近で見ると怖さもひとしおだ。

200905201245000


『伊勢音頭恋寝刃』貢に斬られる万野(パンフレットより)

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