« ハクチョウと、石拾いと、5番の男プジョル | トップページ | 白川先生の漢字歴 »

2006年12月18日 (月)

感劇話その25 知盛を見ながら考えた。

 先週書きそびれてしまったのだが、文楽12月公演に行ってきた。今月は初心者向け文楽教室も開催されているので本公演は夜の部のみ。「義経千本桜」から堀川御所の段、伏見稲荷の段と、渡海屋・大物浦の段、の3段。渡海屋・大物浦の段といえば、私の机の前の壁には、吉田玉男師匠の遣う中納言知盛の写真が飾られている。何年か前の文楽カレンダーの1ページなんだけど。義経との戦いに破れた末、大きな碇を背負って海に身を投じようとする平知盛の姿だ。3年前の9月の東京公演で、実際に玉男師匠が知盛を遣うのも観たことがある。
 12月公演は、玉男師匠が亡くなられてから最初の国立劇場での公演だった。「義経千本桜」と聞いて、おそらく知盛を遣うのは玉男師匠の一番弟子の吉田玉女さんだろうと思っていたが、やはりそうだった。玉女さんの遣う知盛の後ろに、何度も玉男さんの姿を感じながら見た。玉女さんの知盛の勇壮な雰囲気もすばらしかった。白糸縅(しらいとおどし)の鎧に身を固めた知盛の人形の総重量は30キロ近いとのことだが、玉女さんの腕に食い込んでいたのは単なる重量だけの重みではないんだろうな……そんなことを思いながら観てた。
 荒海に漕ぎ出して岩に上り、巨大な碇を背負いながら、頭からゆっくりと落ちて行く知盛。最後は『犬神家の一族』みたいに両足が逆さになって開いて、ついにその足も海に沈んで行く。その様子を目で負っているうちに涙が出てきてしまった。玉男さん、やっぱりもういないんだなあ……。3年前にはこのクライマックスの雄大な場面も全部やり遂げられて、みんなの目を釘付けにしていたのに。玉男師匠のいない舞台の淋しさを、これからまだしばらくは感じるんだろうなあ。なんか今回は、そんなことをいろいろ感じてしまいました。でも、玉男師匠がいなくなったからもう文楽は観ないよ、なんてことはぜったいにないけどね。

Nec_0594Nec_0593


今回のプログラム(左)と、知盛を遣う玉男さん(カレンダーの写真)

« ハクチョウと、石拾いと、5番の男プジョル | トップページ | 白川先生の漢字歴 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 感劇話その25 知盛を見ながら考えた。:

« ハクチョウと、石拾いと、5番の男プジョル | トップページ | 白川先生の漢字歴 »