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2006年4月16日 (日)

感劇話その16 春狂言はサクラとお酒

 茂山家の春狂言東京公演に行ってきた。国立能楽堂で2日間行われていて、春にふさわしい演目を集めている。1日目は昼、夜の2部、2日目は昼のみでそれぞれ3つの演目があり、演目はすべて違うので、3部とも行った人は合計9種類の演目を観ることができるわけだ。私が行ったのは土曜日の夜の部。演目は、「樋の酒」、「月見座頭」、「花折」。すべて、お酒が出てくる話。特に「花折」は酒を飲みながら花見をする話で、まさにタイムリーだった。
 3つの演目とも、役者さんがお酒を飲むときは扇子を盃に見立てるのだが、このお酒の飲みっぷりがみなさんとても上手で、ほんとーにおいしそうに飲み干す。そして最後に喉からコン! というような音を出す。これがまた笑えるし、うまかったー、という感じを引き立てている気がする。落語でも酒を飲むときに扇子を小道具にして使うが、落語のほうはわりと小振りな扇子。それに対して狂言は舞いでも使う大きめの扇を使うので、広げると立派な盃になり、さらに飲みっぷりが豪快な感じがしていい。しかしほんとにおいしそうに飲むんだよね、みんな。
 「樋の酒」は酒蔵と軽物(着物)蔵に閉じ込められた太郎冠者と次郎冠者がなんとかして酒をのもうと、二つの蔵の間に樋(雨樋のような、細長い管)を通してそこに酒を流すという話で、ばかばかしくておかしい。内容が「棒縛り」に少し似ているが、酒を飲むために試行錯誤する様子に、思わず、そこまでして飲みたいか! みたいな突っ込みを入れたくなるほどなんだけど、その飲みたい気持ちがすごくわかるような気もして、また笑える。
 「月見座頭」は人間国宝の千作の座頭がかわいくて味わい深くて、しみじみしてしまった。若手は若手で勢いがあっていいけれど、文楽の玉男師匠しかり、狂言の野村万作しかり、この千作も、「芸は60、70を過ぎてから」とご本人たちがいう台詞がほんとに心に染み渡ってくるような、うまくいえないけれどほーっとさせられる演技だった。茂山ファミリーのほがらかな顔といい飲みっぷりが印象に残って、いい気持ちになった夜だった。楽しくおいしいお酒が飲めるって、幸せなことだもんね。またこの1年、そんな時間がたくさんあるといいなあ。

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能楽堂入り口の庇の上にいた猫。近づいても逃げなかったけど、写真は遠目でまたぼあぼあ......。

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