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2005年9月24日 (土)

感劇話その4 江戸のDV男

 こんな私のブログでも見ていてくださる人がいて、「19日からとまっているけど、次はいつですか?」というメールをいただきました。ありがたいことでございます(涙)。
 じつは数日前から実家に帰ってきて、調子の悪くなった父の世話をする母を手伝ったりしていて、時間はあるにもかかわらずなんだかゆっくりPCに向かう気がおこらないまま毎日が過ぎていたのだけれど、今夜はちょっと一段落したのでPCを開けている。なので、数日前に観た9月文楽公演2部の話をちょっと。
  2部の演目は『菅原伝授手習鑑』の寺子屋の段と『女殺油地獄』。寺子屋は先月、内子座でも観たが、配役は少しずつ違っていた。前回観ていたようでじつはちゃんと観ていなかった人形の細かい動きや、義太夫と人形の動きの絶妙な関係などを観れておもしろかった。しかし、小さな子供が主君の若君のために喜んで命を投げ出すという設定は何度見ても辛い。階級社会でそういうことが名誉な時代だったのだから、といわれてもやっぱり・・・。でも時代物って、そういう設定がやたら多いんだけどね。
 そこへいくと世話物はやっぱり庶民の世界だからわかりやすいというか、さすが近松というか、『油地獄』はいろんな意味でおもしろかった。この与兵衛という男、苦労知らずで見栄っ張りでキレやすくて、家庭内暴力の挙句に勘当されて、借金をせがんで断られた油屋の女主人を殺してしまうという、まさに今の時代でも新聞の三面記事欄に出ていそうなお話。その憎憎しい感じを、人形遣いの勘十郎さんがよく出していた。油まみれになる殺しのシーンは迫力満点で、油に足をとられてツーッとすべるシーンも、とてもリアル。ぬるぬるした油の気持ち悪さや歯がゆさと、この男、与兵衛の性根がうまくだぶっている気がした。前回観た時は蓑助さんが与兵衛を遣っていたが、今回は蓑助さんが女主人で、これはさすがの本領発揮で色っぽい。
 それにしても、近松はこういうどうしようもない男を描かせたら絶品だ。『冥途の飛脚』にしても『天網島』にしても、「いるいる、いるよね、今の時代でも、あんな情けない男・・・」と、帰りにご飯食べながら情けない男談義でひとしきり盛り上がってしまったりできるくらい。男の情けなさって、女のほうが容赦なくリアルに描けるんじゃないかという気がしたりするのだが(今なら、さしずめ内館牧子あたりか?)、同性であそこまでできる近松、やっぱりすごいと思ってしまうわ。

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