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2005年9月13日 (火)

感劇話その3 白狐、あなどれず

 文楽公演(1部)を見てきた。演目は歌舞伎でもおなじみの『芦屋道満大内鑑』。陰陽師で有名な安倍晴明のお父さん、安倍保名を中心とした話で、晴明の出生にまつわるエピソードを物語にしたものだ。偶然にも、2週間前に「本の雑誌」(文藝春秋)の対談で、「陰陽師」の作者である夢枕獏さんと挿絵の村上豊さんにお会いしてきたばかり(同時多発入稿の最初の仕事・・・・・・)だったので、親近感がさらに増してしまった。晴明は、かわいい童子の姿で最後の段に出てくるだけだけど。
 この話では、晴明は保名と(葛の葉姫に化けた)狐との間に生まれた子供という設定で、のちに陰陽師として人並外れた才能を発揮する晴明のDNAはそこにあったのか~、と納得できるような話。保名の人形を、休演の玉男師匠に代わって一番弟子の玉女さんが丁寧に遣っていたのが印象的だった。文雀さんが遣う葛の葉(晴明の母)と狐の早替わりはとても鮮やかで、思わず目を奪われる。他にも、一人遣いから今の三人遣いになった最初の人形とされる与勘平が出てきたりと、見所いっぱいだ。
 他の演目でも馬とか猫とか動物が出てくるものがあるけれど、私はこの文楽の動物たちが大好き。ものすごく緻密に作られている人形とはうってかわって、ものすごく力が抜けたようなかわいい作りなのだ。人形とのそのギャップに、いつも笑ってしまう。しかし、そんな動物の中にあって、狐はけっこうそれらしく作られているほうだ。狐、特に白狐は『本朝廿四孝』とか『義経千本桜』など、時代物にもよく出てきて、重要な役割を果たしていることが多いからか、飛んで消えたり、回転したり、何をしても姿がサマになる。
 もう一つ、今回面白かったのが、狐の化身の台詞。狐の化身であることを想像させるように、人形が狐らしい手足の動きをするようなことがあるが、今回は大夫の語りにもそれがあった。葛の葉の台詞で、「・・・・・お肌寒にはなかりしか」とか「なんぞせずばなるまいか」の最後の「か」のところを、狐のコン! という鳴き声を連想させるように高い音で「・・・・か?」と語るのだ。愛嬌があって、かわいい演出。作者は元祖竹田出雲。文楽の黄金時代を招いたとされる人物だけに、なるほど細かいところまで配慮されているなあと感心させられる。

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